民法722条「損害賠償の方法及び過失相殺」についての解説

民法は刑法のような刑事罰はありませんが、民法722条によって不法行為による損害賠償の方法過失相殺に関して定められています。

損害賠償の方法、または過失相殺になるのはどういう時なのか、詳しく見ていきましょう。

第722条「損害賠償の方法及び過失相殺」の条文

(損害賠償の方法及び過失相殺)
第七百二十二条 第四百十七条の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
2被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

参照:電子政府の総合窓口e-Gov

第722条「損害賠償の方法及び過失の相殺」の解説

最初に第417条の規定は不法行為による損害賠償について準用するとあります。
まずは第417条にどのようなことが書いてあるのかを見てみましょう。

(損害賠償の方法)
第四百十七条 損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。

参照:電子政府の総合窓口e-Gov
第417条では金銭賠償が基本的な損害賠償のありかたとして規定されています。
一般的には金銭賠償がなされますが、名誉毀損の場合は現状回復…つまり名誉回復への請求(謝罪広告など)がされます。
不貞行為の場合は例外である名誉毀損には当てはまらないため、金銭賠償をしなければなりません。

第2項では過失相殺について定めてあります。
被害者側にも過失があった時、それを考慮して加害者の賠償金額を減らすことができるのです。

第422条の過失相殺能力

被害者の過失を認めさせるには、被害者自身が物事や実態、その結果について理解できる事理弁識能力を持っていることが前提となります。
そのため、幼児が飛び出した交通事故の場合は幼児に事理弁識能力はないので幼児の過失を認めて相殺することは出来ません。

しかし、未成年者でも事理弁識能力を備えているのであれば過失相殺することも可能です。

被害者側におおもとの原因がある場合

被害者側による身体的・精神的な素因によって被害が拡大した場合はそれを考慮される場合もあります。
しかし素因は過失とは違うので直接的に過失相殺が認められるわけではありません。
そのため、被害者におおもとの原因があるだろうと推測された場合は、被害者自身に直接的な違法や罰則を与える必要がないにも関わらず賠償額を減額するため適用には慎重にすべきという学説もあります。

裁判で過失相殺が認められる基準

この過失相殺が使われる場合のほとんどは交通事故です。
交通事故を起こした側が慰謝料減量のために過失相殺を主張します。
例えば、

「被害者側は車が来ることに気付いているのにも関わらず、横断歩道ではない車道を渡ろうとした」

という証拠があれば過失相殺が認められる場合があります。
過失相殺は年齢から推測される事理弁識能力やその時の状況、さらに過去類似した裁判例などを考慮して過失割合を定めます。

逆に過失相殺が認められないのは、センターラインオーバーや赤信号無視などの事故では基本的に被害者に過失はないとされ、過失相殺は認められません。

不貞行為が関係する過失相殺の判例

平成13(ワ)941  損害賠償請求事件 
平成15年3月26日  鹿児島地方裁判所

主      文
1 被告らは、各自、原告に対し、10,100,000円及びこれに対する平成12年5月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用はこれを9分し、その4を原告の負担とし、その余は被告らの負担とす
る。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求
被告らは、各自、原告に対し、18,000,000円及びこれに対する平成12年5月2
6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
本件は、交通事故の死亡被害者の内縁の妻であると主張する原告が、加害車
両の運転者に対しては民法709条に基づき、加害車両の保有者に対しては自賠
法3条に基づき、被告ら各自に対して損害賠償(一部請求)及びこれに対する不法
行為日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求
めた事案である。被告らは、死亡被害者には法律上の妻がおり、原告と死亡被害
者との関係は法律上保護に値しないなどと主張して、原告の請求を争っている。

1 基礎となる事実
(1) 交通事故の発生
以下の交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。(甲1,争いのない事
実)
ア 日  時  平成12年5月26日午後2時50分ころ
イ 場  所  福岡市A区B二丁目C番D号先路上
ウ 加害車両  大型貨物自動車(福岡EゆF)
運転者・被告G、保有者・被告H
エ 事故態様  加害車両が、I町方面からJ方面に向けて進行中、K方面からL
一丁目方面に向けて道路を横断中のMに衝突した。

(2) Mの死亡等
M(昭和2年2月17日生。当時73歳)は、本件事故により脳挫傷の傷害を受
け、平成12年5月27日午前9時48分ころ、九州大学医学部附属病院におい
て、死亡した。
Mの法定相続人は、法律上の妻のN、子のO及びPの3名である。
原告(昭和19年2月11日生)は、Mと10年以上にわたり同居生活を送ってい
る者である。(甲2,原告本人,争いのない事実)

(3) 被告Gの過失
被告Gは、加害車両を運転して本件事故現場を直進するに際し、歩道上から
道路を横断しようとしているMを発見したにもかかわらず、積荷に気を取られ、
前方から目を離したため、Mの動静及びその安全を確認しないまま進行し、加
害車両の左前部をMに衝突させたものであり、Mの動静及びその安全を確認す
べき業務上の注意義務を怠った過失がある。(弁論の全趣旨)

(4) 既払額
Mの法定相続人らは、被害者請求により、自賠責保険から合計26,646,4
00円の支払を受けた。また、これとは別に、自賠責保険から、Mの治療費として
897,165円が医療機関に支払われた。(乙2,弁論の全趣旨,争いのない事
実)

2 争点
(1) 損害額
(原告の主張)
ア 原告固有の慰謝料 15,000,000円
Mは、Nとの別居後、NやOと一切の交際をせず、別居後10年ほど経過し
てから、原告と交際を始めた。原告とMは、遅くとも昭和57年から本件事故の
発生まで約18年間にわたり同居し、実質的に夫婦の実体を備えた生活をし、
対外的にも内縁の夫婦として振る舞ってきた。したがって、原告とMの事実上
の夫婦関係は、法的に保護に値する関係であったといえるから、民法711条
の類推により、固有の慰謝料請求権を有しており、その金額は15,000,00
0円を下らない。

イ 扶養利益の侵害による損害額    9,062,991円
(ア) Mの逸失利益額
Mの役員報酬        2,760,000円
(ただし、うち960,000円は原告の専従者給与)
地代家賃           1,260,000円
老齢厚生基礎年金         940,300円
2,760,000+1,260,000+940,300≒4,960,000
生活費控除率40%、就労可能年数6年
4,960,000×(1-0.4)×5.0756=15,104,985(1円未満切捨て。以下1  円
未満の端数が出たとき同じ。)

(イ) 原告の扶養利益侵害額
事故当時、原告はMから扶養を受けており、原告とMの生活状況に照ら
すと、原告が受けるべき扶養利益はMの逸失利益の5分の3と考えるべき
である。
15,104,985×0.6=9,062,991

ウ 葬儀関係費用               2,000,000円

エ 弁護士費用  1,000,000円

オ 合 計                 27,062,991円

(被告らの主張)
ア 原告固有の慰謝料について
原告とMが内縁関係にあったとしても、Mには妻Nがいるのであるから、原告
とMとの関係は重婚的内縁関係ということになる。重婚的内縁関係は、反倫
理的であるといわざるを得ず、原告には固有の慰謝料は認められるべきでは
ない。仮に、認められるとしても、低額が認められるにすぎない。

イ 扶養利益の侵害による損害額について
(ア) Mの逸失利益額について
Mの役員報酬及び原告の給与の合計2,760,000円のうち、Mの寄与
度は最大でも50%であるから、Mの年収は1,380,000円である。
地代家賃は、有限会社M貿易(以下「M貿易」という。)がQに対して支払
った賃料であるから、Mの収入とは無関係である。
Mの役員報酬についての逸失利益額(就労可能年数6年)
1,380,000×(1-0.4)×5.076=4,202,928
年金部分についての逸失利益額(受給可能年数12年)
940,000×(1-0.7)×8.863=2,499,366
4,202,928+2,499,366=6,702,294
したがって、Mの逸失利益額は合計6,702,294円となる。

(イ) 原告の扶養利益侵害額について
原告がMから扶養を受けていたという事実は認められない。

ウ 葬儀関係費用及び弁護士費用について
原告が葬儀費用を立替払したとの点は不知、その余は争う。

(2) 過失相殺(仮定抗弁)
(被告らの主張)
本件事故状況によればMの過失割合は25%であるから、この過失割合に応
じた過失相殺がされるべきである。
(原告の主張)
本件事故状況によれば、Mの過失割合は5%である。

(3) 弁済(仮定抗弁)
(被告らの主張)
M死亡による損害賠償額は、①葬儀費用1,200,000円、②慰謝料22,0
00,000円、③逸失利益6,702,294円の合計額にMの過失割合25%を勘
案して、22,500,000円と算定されるが、前記のとおり、Mの法定相続人らに
対して自賠責保険から合計26,646,400円が支払われている。
原告の扶養利益の侵害による損害及び固有の慰謝料請求権が認められたと
しても、これらの損害はMの損害を前提とするものであり、Mが生命を害されて
損害を被ったことにより生ずる損害であるから、Mの逸失利益及び死亡慰謝料
が法定相続人に対して賠償された以上、加害者である被告らとの関係では、原
告のこれらの損害もてん補されたことになる。法定相続人ではない固有の慰謝
料請求権者が存在するため、通常の場合以上に慰謝料を支払わなければなら
ないとすると、加害者の負担は著しく過大となり、不公平で、かつ予見可能性も
損なわれる結果となる。
(原告の主張)
被告らの主張は争う。
第3 争点に対する判断
1 損害額について(争点(1))

(1) 原告固有の慰謝料について
ア 同棲生活を送っている男女の一方が他の者と法律上の婚姻関係にある場
合であっても、法律上の婚姻関係の実質が失われて事実上離婚同様の状態
となった後に同棲関係が成立したものであって、同棲関係が社会的かつ対外
的にも夫婦と認められて相当の年月が経過しているときには、当該男女間に
社会的にも認められた内縁関係が成立しているというべきであり、これを不貞
関係と評価することはできないから、その一方が不法行為により死亡した場
合には、民法711条の類推により、他方の者に固有の慰謝料請求権が生じ
ると解するのが相当である。
このような重婚的内縁関係にある者に固有の慰謝料請求権を認めた場合に
は、慰謝料の総額が通常の場合と比較して高額となることがあり得るが、その
ような場合には、法律上の婚姻関係が形骸化していることを勘案して、法律上
の配偶者が受領する慰謝料の金額を定めるのが相当であるから、加害者の
負担が著しく過大になることはないと考えられる。なお、重婚的な同棲関係が
二重、三重にも生じているような場合には、一夫一婦制を基本とする我が国
の婚姻制度の下で、当該同棲関係が正当なものとして社会的に是認されない
ことはいうまでもないから、民法711条を類推することは許されない。

イ 証拠(甲4,5,7,8,11,12,15,21,31,原告本人)及び弁論の全趣旨によ
れば、以下の事実が認められる。
妻のN及び娘のOと東京の自宅で暮らしていたMは、昭和47年ころ、自宅に
両名を残し、実家のある福岡に単身戻った。その後、MとN及びOとの間に
は、一切行き来がなかった。
原告は、昭和56年7月ころ、貿易関係の仕事を通じて、福岡市Rのマンショ
ンで一人暮らしをしていたMと知り合った。原告は、Mの助言を得て、同年11
月にM貿易南九州代理店Sの屋号で貿易の仕事を初め、福岡と鹿児島を互
いに行き来してMと交際するようになり、昭和57年1月ころ、Mから結婚を申
し込まれた。原告は、Mの実母のTやMの姉妹らとも親しく交際するようにな
り、同年11月ころには、Mが鹿児島に移り、鹿児島市Uのマンションで同居し
て暮らすようになった。そのころから、原告は、Mの姓を名乗り、Mの妻として
振る舞い、Mも原告を妻として周囲に紹介していた。
同年暮れころ、Mの戸籍謄本を偶然見た原告は、Mに妻子がいることを知っ
てMを問いただし、その後も数回にわたりNとの関係を清算することを求め
た。しかし、離婚の際にはNにまとまった金を渡したいと考えていたMは、金策
がつかなかったことから、離婚に向けての具体的な行動を取らなかった。
昭和58年6月ころ、原告とMは、上記Sを法人化してM貿易を設立し、2人で
貿易関係の仕事をして生計を立てるようになった。Mは、M貿易の代表者を
務めるとともに、同社において貿易の営業等外回りの仕事を担当し、原告は、
主に小売り、経理、仕入れを担当していた。
昭和63年ころ原告はガンにかかり、平成元年4月に入院して手術を受けた
が、Mは献身的に原告の身の回りの世話を行った。
70歳に達して老齢年金を受給するようになったMは、Nに渡すまとまった金
の目処がついたことなどから、平成11年ころから、離婚に向けて動き始め、
本件事故に遭遇する約1か月前の平成12年4月下旬ころ、東京でNと話合い
をした。原告は、Mから、Nが離婚に応じる意向であると聞かされ、また、その
ころ、原告に全財産を残せるように遺言書を作成するつもりであるとも伝えら
れた。
本件事故後、原告は、Mが搬送された九州大学医学部附属病院に鹿児島か
ら駆けつけたが、意識が回復しないまま、Mは死亡した。
Mの郷里である福岡で行われた葬儀で、原告は喪主を務め、Mの妹を介して
NやOに連絡をしたが、何らの返事もなく、Nらは葬儀にも参列しなかった。そ
の後、Mの親友らが発起人となり、同年6月24日に鹿児島で「お別れ会」が開
かれたが、そこでも、原告は「M」の名で謝辞を述べた。原告は、Mの49日の
法要を執り行った上、遺骨も原告の郷里にある寺院で保管している。なお、N
からの遺骨の引取りなどの申入れはない。
また、原告は、事故後、A警察署及び福岡地検において、Mの妻として、遺族
感情等に関する事情聴取を受けた。

ウ 上記認定事実によれば、Mは、Nらとの別居から約9年が経過した昭和56
年に原告と知り合い、昭和57年11月から本件事故により死亡するまでの17
年間余りにわたり、原告と同居して実質的に夫婦の実体を備えた生活を送り、
対外的にも内縁の夫婦として振る舞っており、原告とMとの間には社会的にも
認められた内縁関係が成立していたものと認められるから、原告について民
法711条を類推して法の保護を与えるのが相当と考えられる。上記認定事実
その他本件に現れた一切の事情を斟酌すると、原告固有の慰謝料の金額は
10,000,000円が相当である。

(2) 扶養利益の侵害による損害額について
ア まず、Mの逸失利益額について検討する。
上記認定事実及び証拠(甲23,24,原告本人)によれば、Mは、M貿易の代
表者を務めるとともに、同社において貿易の営業等を担当しており、事故当
時、同社から年間1,800,000円の役員報酬を受けていた事実が認められ
る。したがって、Mの逸失利益は、この報酬額を基礎として算定するのが相当
であり、これと異なる算定方法を採るべきとする原被告ら双方の主張はいず
れも採用しない。
地代家賃については、証拠(甲23,24)中の「地代,家賃等の内訳書」にM貿
易がQに対して年間1,260,000円を支払った旨の記載があるのみであり、
Mに地代家賃収入があることを認めるに足りる証拠はないから、原告の主張
は採用しない。
老齢厚生基礎年金については、証拠(甲25)によれば、事故当時、Mが合計
940,300円の年金を受給していた事実が認められる。
以上に基づきMの逸失利益の金額を算定する。本件事故当時の73歳男性
の平均余命は約12年であり、その約2分の1の6年間は就労可能と考えられ
るから、Mの死亡後6年間の逸失利益額は、生活費控除率を4割として、
(1,800,000+940,300)×(1-0.4)×5.0756=8,345,200
79歳以後の6年間は年金収入のみとなり、その逸失利益額は、生活費控除
率を7割として、
940,300×(1-0.7)×(8.8632-5.0756)=1,068,444
8,345,200+1,068,444=9,413,644
したがって、Mの逸失利益額は、9,413,644円となる。

イ 次に、原告の扶養利益の侵害額について検討する。
前記認定事実及び証拠(甲23,24)によれば、原告は、Mと共に昭和56年こ
ろから共同で貿易関係の事業を行っており、昭和58年にはM貿易を設立し、
共同して経営に当たってきたものであって、主に小売り、経理、仕入れを担当
し、事故当時、同社から給与として年間960,000円の支給を受けていたこと
が認められる。
以上のような事情にかんがみれば、事故当時、原告がMから扶養を受けて
いた事実は認められるものの(原告が支給を受けていた給与のみでは、通常
の生活は困難であろう。)、両名の就労状況、生活状況及び年齢差に照らす
と、原告がMから扶養を受けられる期間は、Mが就労可能である6年間に限
られ、その金額はMの逸失利益中の5分の2と考えるのが相当である。
8,345,200×0.4=3,338,080
したがって、原告の扶養利益の侵害額は、3,338,080円となる。

(3) 葬儀関係費用について
証拠(甲10~12,21,26~30(枝番全部を含む。),原告本人)及び弁論の全
趣旨によれば、原告は、Mの郷里である福岡と、原告とMの生活の本拠地であ
る鹿児島の2箇所において葬儀等を行い、1,600,000円以上の支出をした
事実が認められる。Mの生活状況等にかんがみれば、本件事故と相当因果関
係が認められる損害は、1,500,000円が相当である。
2 過失相殺について(争点(2))
証拠(甲3~6)によれば、①本件事故現場は、国道V号線上の交通整理の行われ
ていない交差点内であり、横断歩道は設置されていないこと、②加害車両が進行し
ていた国道V号線は片側2車線で、道路中央部には中央分離帯が設置されてお
り、最高速度が時速50㎞に制限されていたこと、③本件事故現場である交差点は
横断歩行者が比較的多く、被告Gもそのことを十分に認識していたこと、④被告G
が加害車両を運転してI町方面からJ方面に向けて時速約50㎞で進行中、約43m
前方の進路左側の交差点手前の歩道上に、車道の方向を向いて立っているMが
いることに気付いたこと、⑤その時、加害車両の左側の車線を普通乗用自動車が
2台ほど加害車両を追い抜いて行ったため、これらの普通乗用自動車の通過直後
にMが道路を横断することはないだろうと考えた被告Gは、前方から目を離し、バッ
クミラーを見て積荷の状態を確認したこと、⑥再び前方に視線を向けた被告Gは、
加害車両の左側車線上に走り出て来るMを約15m前方に発見し、制動措置を講
じたが、間に合わず、加害車両の左前部をMに衝突させたことがいずれも認めら
れる。
上記認定事実に事故当時のMの年齢を勘案すれば、本件事故に関するM側の過失は、20%と認めるのが相当である。

3 弁済について(争点(3))
上記1及び2によれば、被告らが負担すべき損害賠償の総額(弁護士費用を除
く。)は、次のとおり、30,248,647円と認めるのが相当である。
① Mの逸失利益額   9,413,644円
② 葬儀関係費用   1,500,000円
③ 慰謝料       26,000,000円
ア うち原告固有の慰謝料  10,000,000円
イ その他の慰謝料     16,000,000円
④ 治療費  897,165円
⑤ ①~④の合計 37,810,809円
⑥ ⑤×0.8  30,248,647円
これらのうち、原告固有の損害項目は②及び③アであり、①、③イ及び④の損害
項目は、Mの法定相続人らに帰属するものである。
法定相続人らに帰属する損害項目である①、③イ及び④についての過失相殺後
の金額は、次のとおり21,048,647円となる。
(9,413,644+16,000,000+897,165)×0.8=21,048,647
前記のとおり、Mの法定相続人らに対しては自賠責保険から合計26,646,400
円が支払われているほか、治療費として897,165円が医療機関に支払われてい
る。これらのうち、法定相続人らに支払われた金額についての各相続人ごとの内
訳及び損害項目は明らかではないが、法定相続人らの過失相殺後の損害額を大
幅に上回る金額が支払われていることから考えて、法定相続人らに帰属する損害
項目である①、③イ及び④については、全額が弁済されていると認められる。
そこで、死亡被害者の相続人に死亡被害者の逸失利益相当額の損害賠償が支
払われた場合における、死亡被害者の内縁の配偶者が有していた扶養利益喪失
相当額の損害賠償請求権の帰趨について検討する。
死亡被害者の逸失利益は同人が死亡しなかったとすれば得べかりし利益であり、
死亡被害者の内縁の配偶者の扶養に要する費用は当該利益から支出されるべき
ものであるから、死亡被害者の相続人が承継した逸失利益相当額の損害賠償請
求権と死亡被害者の内縁の配偶者の扶養利益喪失相当額の損害賠償請求権
は、扶養利益喪失相当額の範囲で重なり合う関係にあるといえる。このため、加害
者は、両者の損害賠償請求権が重なり合う範囲において、いずれか一方に支払っ
た金額の限度で他方に対する関係でも責任を免れ、その後は、死亡被害者の内縁
の配偶者と相続人の間において、不当利得あるいは求償の問題として解決すべき
ことになると解するのが相当である(最判平成5年4月6日・民集47巻6号4505頁参
照)。
上記のとおり、Mの法定相続人らに帰属する損害はすべて弁済がされていると認
められるから、法定相続人らが承継した逸失利益相当額と全額が重なり合う原告
の扶養利益喪失相当額について、被告らは、原告に対する関係でも責任を免れ
る。したがって、原告は、扶養利益喪失相当額の損害賠償を被告らに対して求める
ことができないといわなければならない。
他方で、原告固有の損害項目である上記②及び③アの損害については、法定相
続人らに帰属する損害とは法律上別個のものであり、法定相続人らに対する支払
により原告に対する関係でも免責される理由は何ら存在しないから、これらについ
てのてん補を主張する被告らの主張は、採用することができない。

4 まとめ
以上によれば、原告が支払を受けるべき損害額は、次のとおりとなる。
(10,000,000+1,500,000)×0.8=9,200,000
本件事案の内容等一切の事情を考慮すると、本件事故と相当因果関係がある弁
護士費用の額は900,000円と認めるのが相当であるから、原告には、上記金額
に弁護士費用の額を加えた10,100,000円の損害賠償請求権がある。
第4 結論
よって、原告の請求は主文第1項の限度で理由があるから認容し、その余は理由
がないから棄却し、主文のとおり判決する。

鹿児島地方裁判所民事第1部
裁判官 市  原  義  孝

この判例では事故で死亡した男性Mの重婚的内縁関係にある女性が、事故を引き起こした側に対して裁判をおこした判例になります。

これは不貞行為が直接的に722条に関わっているわけではありませんが、死亡した男性の過失相殺が問題になっている判例です。

過失相殺として取り上げられている部分

過失相殺として取り上げられているのは、交通事故の瞬間の出来事。

普通乗用車が2台通過直後、まさか自分が通過する時に男性が横断するとは思わなかった被告。
この場合、死亡した男性が危ない横断をしたと見て取れます。

この判例では男性の年齢(高齢で推定余命6年とされる)や事故内容から考慮した過失割合は20%として認められています。
死亡した被害者の過失を決める際は慰謝料だけでなく年金や過去の仕事による報酬、さらには健康状態で生きた場合の仮余命などを入れて計算します。

不倫関係でも請求出来るのか

この場合、別居中(別居してから9年が経過した頃に女性と知り合う)は一切法律上の家族と交流をしなかったため、事実上夫婦関係は破綻していたと判断されています。
さらに死亡した男性と17年間という同居生活が長く、さらに周りにも女性を妻として紹介していたため2人は社会的にも認められた内縁関係が成立していたと認められました。

また、死亡した男性は当初内縁関係にあった女性に自分が結婚していることを告げていませんでした。
未だに法律上の妻と離婚していなかったのは離婚する際にまとまったお金を渡したかったため。
やっとお金を用意することができた男性は死亡する前に妻と会い、離婚に向けた話し合いをしていました。
法律上の妻はその離婚について応じる意向があったとされています。

さらに男性が死亡した時、現在住居地での葬式と男性の故郷での葬式のどちらにも參加したのは内縁関係にあった女性で、法律上の妻は葬儀に出席することもありませんでした。

よって、法律上の妻とは離婚同様の状態となった後に女性との同棲関係が成立しており、さらに社会的に夫婦関係が認められていることと、相当の月日が経過しているため重婚的内縁関係ではなく、社会的に認められた内縁関係が成立しているとして「不貞行為」とはみなされなかったのです。

ちなみに重婚的な内縁関係が二重、三重にもなっている場合は同棲関係は正当化されないようです。

不貞行為においての過失相殺は認められるの?

今回紹介した判例は旦那が死亡した交通事故がメインでした。
法律上の妻が裁判所に訴えたのではなく、重婚的内縁関係にある女性による訴えのため損害賠償の請求権がそもそもあるのか、交通事故による男性側の過失相殺はあるのかが議論されていました。

では、実際不倫・不貞行為がメインの裁判の場合、過失相殺は認められるのでしょうか。
実際、不倫・不貞行為をした側が過失相殺を認めてもらおうと、「夫婦関係が冷え切っていた」「寂しい思いをしていた」「冷たい態度を取られた」など主張する場合もあるそうです。

しかし不倫においては過失相殺はあまり認められず否定されることが多いようです。
不倫以前の夫婦関係の破綻はどちらに責任があるのか判断し難く、過失と言えるか疑問もあるからとされています。

稀に不倫された方のダブル不倫が素因で不倫をした場合は認められることもあるようですが、ほとんど認められないので過失相殺があるからといってリベンジ不倫なんてしないようにしましょう。

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